「ドライブ」2011年


ひょっとして「ザ・ドライバー」1978年のリメイクかな?
と思ったのだが、7割がたその通りだった。
昼はカースタントマンで、夜は逃がし屋という男の物語。
原作はサム・ペキンパーの後継者的存在の、
ウォルター・ヒルが監督を務めた肝の据わった名作だ。
その時の主役はライアン・オニール。
当時メロウな役どころで世界的知名度を上げつつも、
私生活では喧嘩っ早いので有名だった俳優である。
寡黙で筋を貫く男。ブロンドヘアで端正なマスク。
虚無的であり静寂なる狂気を秘めた眼。そして孤高の一匹狼。
だいたいこんな感じの役だったが、今回も全くそのままだった。
まるで前作をコピーしたかのようなキャラクター。
偶然なのか、主役の俳優の名前もなぜかライアン繋がり。
どうしてもオマージュを感じてしまう作り込みだ。
7割がたは「ザ・ドライバー」なのだが、残りの3割は北野武である。
あるシーンなどはカメラワークから演出までそのまんまだった。
だが、猿真似的な間の抜けた印象は決して受けない。
それは、大真面目に真剣に「KITANO」に取り組んでいるからだ。
カンヌで監督賞を穫った模様で、欧州の批評家から激賞されている。
だが正直言ってそれ程のものかな?という違和感が、少し残る作品でもある。
しかしながら「ザ・ドライバー」と「KITANO」へのオマージュがたっぷりなので、
それだけで飯3杯イケる仕上がりぶりなのは確かだ。
底辺に流れているのはサクリファイス。この類いの作品で決して外せない要素だ。
「サクリファイス」つまり自己犠牲からくるやせ我慢こそが真骨頂であり、
それに耐えうるかどうかで男前度が決まってくるという仕組みだ。
「ドライヴ」の主人公は正に、そのど真ん中に位置していた。
数あるハードサクリファイス物でも、どうしてもはずせない一本がある。
「ドライヴ」を観た後どうしてもまた観たくなり、久々にDVDを借りてみた。
「グロリア」1980年
こちらの主人公は女である。
今流行りの女子ではない、マフィアのボスの元情婦である。
しかし、そのカラッとした気っ風の良さから裏社会で一目置かれた女である。
もう人生の折り返し地点を過ぎたので、貯めた小銭で猫と一緒に楽隠居中である。
そんな中、同じアパートに住む友人宅で悲劇が起きる。
マフィアの会計士をやっている旦那がその裏金をかすめ取り、
それがバレたので今度は裏口座が載っている手帳をFBIに渡そうとする。
しかしその前にマフィアに感づかれたので、
偶然居合わせたグロリアへ、一番下の男の子と手帳を託すのだ。
その後残った家族は、見せしめの為に虐殺される。
グロリアは裏社会の恐ろしさを、嫌というほど知っている。
だが迷ったあげく、友人の最後の頼みを全うする事を決意する。
すぐにマフィアの容赦ない追撃が始まる。
それを紙一重でかわしながら、絶望的な状況の打開を計ろうとする。
男の子と手帳を守る為、所構わず銃をぶっ放すグロリア。
元情婦らしく、強面の男達を女ならではの肉弾戦で煙に巻いていくグロリア。
も〜これがカッコいいのなんの。シビれるのなんの。
もう一度いうが、50に手が届きそうな元情婦である。
皺はあるし、体型だって崩れてきている。しかし、しかしカッコいいのだ。
右手で銀色の銃をぶっ放しながら、左手にはスーツケースを握りしめている。
スーツケースには急いで詰め込んだ着替えの衣装が入っている。
どんなぼろホテルに泊まろうとも、
ちゃんと衣装一式を出しバスルームの湯気でシワを伸ばす。
朝はちゃんと髪をとかし、化粧をし、最後に口紅を付ける。
そして気合いを入れて再び強面達とやり合うのである。
余計な演出が排除されているので、
おのずとリアリティが溢れて返ってくる。
主人公のグロリアを演じたのはジーナ・ローランズ。
ずしっと腰の据わった女優である。
監督はその旦那のジョン・カサヴェテス。
ニューヨーク出身でありながらアメリカ的商業主義を否定し、
インディペンデント映画の潮流を作った伝説的な監督である。
俳優としてもちょいちょい別企画に顔を出していて、
「パニック・イン・スタジアム」の特殊部隊の隊長役が印象に深い。
この作品では夫婦揃って仲良く出演していた。
本作「グロリア」では、ヴェネチア映画祭で金獅子賞を穫っている。
1998年にシャロン・ストーンでリメイクされたが、
かっこ良さではジーナ・ローランズの足元にも及ばなかった。
「レオン」1994年では、見事にパクられている....もとえ、原案となっている。
いずれにせよ、後々に多大な影響を残した傑出した作品といえる。
最初はぎこちなかった少年との会話も終盤には噛み合うようになり、
ドスの効いた裏社会の女はやがて母性に目覚める。これが全くいやらしくない。
久々に観終わって一言。しつこく一言。「ジーナ姐さん、カッコええぞ!!」
立派な年齢で「女子が〜」「女子会が〜」「男子が〜」などと言ってると、
恐ろしいほどの眼力でメンチ切られそうな、そんな姐さんでもあったな。。



