ヒアアフターとは[来世][これから][この後]といった意味合いらしいが、
要は昨今流行りのスピリチュアルを扱った映画である。
とはいっても監督がクリント・イーストウッドとなると、
やはりその辺はとても冷静で、リアリスティックに描かれていた。
良質なる寸止めが全編に渡ってしっかりと効いているので、
浮つきが極めて少なく、腰の据わった作品に仕上がっている。
いかんせん どうしてもこの類いのテーマは、
オカルト的もしくは宗教的な方向に落とされやすい。
だがイーストウッドは違う、決してブレないようだ。
非常にデリケートな素材を、うま〜くアクを抜いて調理した感じだ。
ただ冒頭の津波のシーンだけは、思わず言葉を失ってしまう。
今年の3/11の記憶が蘇り、胸が締め付けられる思いだった。
一見イーストウッドにしては珍しい過剰演出のようだが、
あのシーンがなければ少し説得力に欠けたかもしれない。
後プロデュースに、スピルバーグが参加している影響もあるのだろう。
どちらにせよ最初に圧倒的な事象と遭遇させられるので、
メインテーマに自然と辿り着きやすくなったのは確かだ。
物語は、三人の視点での同時進行形で描かれている。
一人は霊能者で、今はその才能からできる限り遠ざかりたいアメリカの男性。
一人は津波被害から生還する際、向こうの世界を覗いてしまったフランスの女性。
一人は失ってしまった双子の兄の現在を、どうしても知りたいイギリスの男の子。
それぞれがそれぞれの国で、似たような心傷の元に右往左往している。
しかしそれぞれがそれぞれに、僅かな目的や僅かな目標も持ち合わせている。
決して「絶望」などといった安易なテーゼではなく、
かと言って「幸福感」といった予定調和型でもない。
僅かな目的や僅かな目標は、それ自体が僅かな希望のようなものでもある。
そんなとても静かなテンスの中、三人はロンドンで交差する。
その僅かな何か(思い)が発端となって。
終わり方も秀逸である。
余韻を残すとは、正にこういう事なのだろうと改めて思った。